考察その1〜第一巻〜

EMP能力そのものの謎

 作品に登場するEMP能力に関して考察していこうかと思います。
EMP能力はなぜ“EMP”能力なのか?
それは、ESP(超能力)とは意味的には違いますが、ほぼ同じといっていいでしょう。
しかし、EMPは十代の初めからいきなり発生する。つまり電磁パルスのように発生する。EMPの略はおそらくElectroMagnetic Pulseからとったものだと思われます。
宮野が気づいたようにEMP能力はこの世界になくてはならない要素であり、それが世界を構築していると考えています。
しかし、なぜ彼らの存在する“世界”にEMP能力が存在するのか、もちろんそれは無数に並行する世界にも同じことが言えます。量子力学で有名なシュレーディンガーの猫のように、世界はさまざまな箱にいれられた実験台かもしれないのです。いまリアルに存在する現実。これがもし作られた世界だとしても誰も気づかない。いや、気づいたとしてもそれをどうやって証明するのか皆目見当もつかないでしょう。このような考え方は意外にも古くから語られてきました。哲学にも似ていますが、どうでしょうかねぇ……。

PSYネットワークの構築と消失

 春奈がEMP能力に目覚めたとき、PSYネットワークが構築されたと思われる。彼女の能力はPSYネットの構築と不可視障壁を張り巡らせる力、「念動力」だと思われる。
この物語では春奈は亡くなりPSYネットは完全に消滅したと思われるが、春奈が幽霊として実体化した際に、エネルギー源として供給されていた。これは亡くなる間際になんらかの能力を行使したと思われる。PSYネットが正しく機能せず、なおかつ本来とは違う使われ方をしたので、世界に歪みが生まれたこともある。
実体化していた春奈が消滅したことで、PSYネットは消滅したと思われがちではあるが、そうではない。
残りカスとしてまだ存在していた。だが、確実に消滅する日は来るだろう。

なぜ春奈は実体化することができたのか

 第一巻の終盤であきらかになっているが、春奈の情報体つまり魂はPSYネットのエネルギーを利用して兄である佳由季に憑依していたのではないかと考えられている。ここでいう魂は春奈の意識体、つまり一種の情報生命体となっている。情報として存在していた春奈にとって、若菜の身体にとりつき身体の操ることは造作もないだろう。PSYネットが一瞬で生まれ、一瞬で崩壊する。まるで神話に登場する破壊と再生ではないか。順番は逆だがそれに値すると思われる。彼女は他に並行する世界によっては生きていたり生かされていたりという形で存在している。これは第四巻の並行世界を股にかけた話にでてきた。